第63話

千花side




夜中目が覚めると、叶斗が腰に抱きついて寝ていた。



肉が落ち、骨ばってる私の身体を抱きしめても痛いだけなのに…。



寝てる叶斗の頭を撫でる。



私が撫でたことで、くすぐったかったのか「…ん」と身動ぐ。



そのせいで顔が見え、私は驚いた。



隈が……酷い。



こんな隈あったっけ?



夜は寝てるはずだと思ってたけど、何してるの?



今日は寝れる日なの?



どうしたらこんなに隈ができるの?



考えても、無気力状態の私じゃ、何も出来ない。



聞くことも、仕事に着いていくことも出来ない私に叶斗の隣にいる資格はあるの?



私が、叶斗にこんな酷い隈を作ったの?



やっぱり私が原因なんだよね?



叶斗も朱羽も、私がいるからこんな風になるんだ…。



「…ッ」



言葉を発したいのに出ない、伝えたいのに伝えられない。



静かに叶斗を抱きしめる。



本当に…ごめんね。



声が出ないのに、私は口を動かし何度も何度も『ごめん』と言った。



「……また泣いてるのか?」



その言葉に私は泣いていないと示すため、睨む。



「ふっ…泣き虫だな、千花は」



グイッと目元を拭う叶斗に、私も叶斗の隈をなぞる。



その仕草で気付いたのか、叶斗は言った。



「俺は大丈夫だから、心配すんな」



そんなこと言われても、顔に出てるということはそういうことで…。



「自分の体調第一に考えろ。俺の事は後でいい」



私の撫でる手に、気持ちよさそうに「もっと…」と言ってくる。



暫く撫でていると寝息が聞こえ、また眠りについたのだと気付く。



私もすぐに眠りについた。





* * *






この時なんで「大丈夫」なんて嘘ついたの?



私に負担をかけないため?



それとも私をこれ以上壊させないため?



どっちにしろ、壊れてるものはもう二度と直せないんだから…。



結果は同じだったんだよ。

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