第62話

叶斗side




千花の失声症は治らなく、俺は何か精神的に抱えてるものではないのかと思い始めていた。



元々安定しない精神に俺が入ったことで、もっと不安定になっていった。



家を出る時までには起きているが、帰ると眠っている。



段々とやつれていく千花を見ていられない。



まともに食事ができねぇ状態に加え、薬も飲めない。



本当は仕事もしたくないが、俺が隣にいても何も変わらない。



最近は大きい商談と、裏も忙しい。



瑞世壮を殺らねぇ限り、ずっと千花は狙われるだろう。



俺が殺すより、千花の手でアイツを殺した事を自覚させれば、少しはマシになんのか?



ノックが聞こえ、部屋に入れる。



「社長、本日の資料です」



「…あぁ、置いとけ」



俺の返事が聞こえなかったのか、それとも何か他にも言うことがあったのか、ずっと部屋にいる女を見る。



「社長、大丈夫ですか?隈酷いですよ」



「……あ゛?」



「私に出来ることがあったら言ってくださいね。家事も気持ちイイこともしますよ?」



…んだよ、コイツ。



こんな社員いたか?



まぁ、ここにいるならうちの社員だろうけど。



「……気持ち悪ぃこというな」



「でっ、でも、本当に隈が酷いですし、私ならっ」



「うぜぇよ。千花以外がくだらねぇ話すんな、仕事しろ」



「っ…失礼、しました」



癖で、目つき悪ぃまま話しちまった。



追い払えたし、いいか…。



スマホを持ち、電話をかける。



プルルル…とコールがなり、朱羽と繋がる。



『お疲れ様です、叶斗様』



「朱羽、千花の様子はどうだ」



『本日はいつもより体調が優れなかったようで、先程眠りにつきました』



「そうか…俺も今から帰る」



『かしこまりました』



やはり、ダメだったか…。



朝の様子を見れば、キスした時に視線が動くことがほとんどだが、今日は俺に目もくれず、魂が抜けたような状態だった。



俺も本調子じゃないし、千花と寝よう。



支度を済ませ、帰る。

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