第57話

叶斗side




パタンと扉を閉め、部屋の外に出る。



続けて朱羽も出てきた。



「叶斗様、仕事は…」



「はっ、行くかよ…千花に振り払われたんだ。仕事なんて手に付かねぇよ」



あんなに酷く拒絶されたのは初めてだ。



それに…



「なぁ、朱羽……千花は俺よりお前の方がいいのかもな」



「…は?」



「あいつの顔みたろ?お前に触れようとした手を俺が掴んだら、すげぇ悲しそうな顔されたんだ」



「…っ」



俺じゃ、傍にいてもダメなのかもな。



「どうしたら、いいんだよ…」



失声症になるわ、襲われるわ…俺を拒むわで、俺が隣にいて何も出来てねぇじゃねぇか。



未だに千花は瑞世壮に囚われ続け、壮の金で動いてる下が千花を襲い今回のことが起こった。



幸せにしたいと思えば思うほど、千花を苦しめてる自覚がある。



「お前から見て、俺が傍にいて幸せにできてると思うか?」



「それは……分かりません。2人の問題ですので、私が答えることはできません」



「けどよぉ、千花をお前に渡すくらいなら俺は千花を殺したい」



「……でしたら、心中を…するという」



「それが出来たらどれだけ良いか…」



千花は死にたいと口にした事があるが、あれは呑まれてる時にしか言ってねぇ。



思ってても、シラフの時は何も言ってこねぇ。



だからこそ、千花の記憶が全て俺に変わるよう、外に連れてって思い出を作りてぇのに…。



「はぁ……俺は裏部屋にいる。2時間後には戻る。千花の様子見とけよ」



「かしこまりました」

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