第54話
「……」
「よぉ、起きたか」
声の主に顔を上げる。
「悪ぃな、てめぇを殴るつもりはなかったんだけどよぉ」
私が置かれてる状況を理解する。
手足は縛られ、口はテープで塞がれてる。
朱羽は?朱羽は何処にいるの?
キョロキョロ探してると、ドサッと音が聞こえた。
「探しもんはコイツか?」
そこにはボロボロになった朱羽の姿があった。
沢山殴られ、蹴られたのだろう。
傷が酷い。
「んー!!!」
「口外してやれ」
ビリッとテープが剥がされ口は自由になる。
「朱羽!起きてよ、起きてよ!!!」
私の声が響く。
ピクリともしない。
そんなはず……ない。
朱羽は、死なないよ…………。
「女を連れてくれば、その他はどうなろうと知ったこっちゃねぇからな」
その言葉にカチンときた。
「てめぇ!!」
「静かにしろよ。今コイツを殺してやってもいいんだぜ」
銃を朱羽に突きつける。
「…っ……私が静かにしてりゃ、殺さねぇのかよ」
「まぁ、俺たちの願いを聞きゃァ、助かるかもしれねぇぜ」
私はクイッと顎で続きを促す。
「ヤらせろ」
「……………は?」
思考が停止した。
何言ってんだ、この男。
「だからヤらせろっつの。そしたらコイツは殺さねぇよ」
それで収まるのか?
「…………本当に殺さねぇんだろうな?」
「あぁ、殺さねぇよ?」
「何人だ」
「ここにいるヤツら全員」
パッと見、10人以上いるんだが?
けど、本当に殺さないんだろうか?
それに誰がこんな事を仕掛けんだよ。
「どーすんだ?答えが出ねぇなら殺すしかねぇだろーがよ」
迷ってると弱々しいが朱羽の声が聞こえた。
「千花……様、そんな事…しなくて大丈夫ですので………私を見捨ててください…」
「何でそんな事言うの…?」
「へぇー、お前愛されてんだなぁ」
朱羽を見捨てるなんて嫌だよ。
「で?お前の答えは?」
私が出した答えはこれだった。
「朱羽を……殺さないで」
「千花様…!?」
「朱羽は黙ってろ。私は朱羽が殺される方が嫌だ、ただそれだけだ」
「いい判断だ。殺されたくねぇよなぁ?ずっと護衛してたんだ、そいつが居なくなったらお前は殺されるしか道はねぇ」
「……チッ」
本当にイラつく。
「1つ聞きてぇ。誰が上にいる」
「聞いてどうすんだよ」
「何も」
興味がある。
こんな事するやつは叶斗に言って殺してもらう。
素直に言う奴らじゃなさそうだけどな。
「瑞世壮だ」
名前が出た途端、ヒュっと喉が鳴る。
あいつが…あいつが……。
ガタガタと震える身体。
「こっちは金もらってんだ。殺さねぇ程度に身体に刻みこめってな」
なんで私に付き纏うの…?
私たち別れたじゃん…あんたから振ったじゃん……。
私に何を望んでるの?何を期待してるの?
「千花様……気を確かに…」
ゆっくり朱羽へ振り向く。
「……たす…けて、朱羽……!」
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