第53話

1度しか店に行ったことがないため、地図を頼りに向かう。



朱羽の手を引っ張り、進んで行く。



「朱羽、ここどこ?」



「地図を見てたのではないのですか?」



「うん、まぁそーなんだけど…」



ゴニョゴニョと口ごもる。



「迷子という事ですね」



迷子という言葉に、ピク…と反応した。



「いや、迷子じゃないけど…地図が悪いって言うか、道がややこしいって言うか……」



私の言葉を聞いて、朱羽は笑った。



「ふふ、私が案内致しますよ」



初めて見た表情…。



そんな顔で笑うんだ、と思った。



いつも叶斗がいるから堅苦しい感じを出してるけど、笑った方が私は好きだ。



優しく微笑んでくれることはあっても、笑う事はなかった。



「朱羽、あんた笑ってる方がいいよ」



私の言葉に朱羽は目を丸くする。



ハッと自分の言葉に驚く。



何言ってんだ、私。



「ありがとうございます、千花様」



「いや、ごめん…。叶斗がいると朱羽は笑わないから」



「そうですね。主従関係がありますし、私も千花様と同じく拾われた身ですから」



拾われた?



朱羽が??



「…え、今のどういう、」



「千花様、こちらですよ」



「う、うん」



私の言葉は遮られた。



もしかして、聞かれたくなかったのか?



手を引っ張られ、朱羽の後に着いていく。



聞いちゃいけない事だったかな?



嫌な思い出があるとか、思い出したくない何かがあるとか。



人それぞれ持ってるから、無理には聞かないけど。



主従関係は目に見てわかるから、そこを深堀しようとは思わない。



私を様付けする理由もそれが関係してるだろう。



私が踏み込んでは行けない何かが朱羽の中にあるのか…。



「朱羽、こっちで合ってるの?」



「えぇ、大丈夫ですよ。場所分かりますので」



「うん…」



暫く行くと、細い裏路地に入った。



こんなとこ、叶斗と来たっけ?



疑問に思っていると、思いっきり腕を引っ張られ、抱きしめられた。



と、同時に銃声が横から聞こえた。



「千花様、お怪我はありませんか?」



「う、うん…大丈……夫」



私は言葉を発したと同時に体が動いた。



朱羽を庇うため守ったら、ガン!と、頭に鈍い音がした。



吹っ飛ばされる。



「千花様!?」



「おいおい、女に手ぇ出すなって言われなかったのか?」



「いや〜男の方殴ろうと思ったら庇いやがったからさ〜、仕方ねぇだろ?」



頭に受けた衝撃で私は気絶した。



「千花様!千花様!!」



朱羽の声は届かない…。

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