第52話

「朱羽、着いてきて欲しいところがあるの」



鍵はかかったまま、扉の向こうにいる朱羽に話しかけた。



「叶斗様に許可は取りましたか?」



「ううん、何も言ってない」



「では私が伝えますので、場所を教えてもらうことは可能でしょうか?」



「…内緒で行きたいの」



この部屋から出られないことに不満はない。



外に出なくても、叶斗が帰ってきてくれるから。



私は叶斗がいるから生きている。



それだけの事。



「ですが…勝手に外へ出すのは禁止されています」



言うのを迷ったが、理由を言わなきゃ出して貰えないことはわかってる。



仕方なく外に出たい理由を言った。



「……前、刺青入れてもらった紫波しばさんいるでしょ?…また刺青いれたいなって……」



「そう、ですか…。ですが叶斗様からの許可が出るとは思えませんが、」



「うん……だから叶斗に言いたくないんだよ。他の男が私の身体に触るのは嫌がってたもんね。私のワガママで背中に入れてもらったからさ…」



紫波さんは叶斗の親友だ。



叶斗より5つ年上で、ミステリアスなオーラがある。



だけど、話してみるととても優しく、性格は叶斗とは正反対だ。



年上なのに叶斗はタメで話してる。



2人の関係性なんて私は知らないから、お互いがそれでいいならいいと思う。



「朱羽、どうしてもダメ?」



その問いに少し考えてから朱羽が答えた。



「…外に出ると言うことだけお伝えしてもよろしいでしょうか?」



「それならいいよ」



私の身体に刺青が増えることを怒るだろうか…。



相談した方がいいのか……。



「千花様、叶斗様から許可頂きました」



そう言い、鍵と扉を開けてくれた。



「ありがとう。ちゃんと私の傍にいてね?」

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