第51話

「結構腫れてるなー、よくこの足で歩けたな」



「腫れてないっつってんじゃん…あほ叶斗」



「んー?どこを見たら腫れてねぇんだよ」



「…別に大した事ねぇし」



右足首に湿布と、包帯を手際よく巻いてくれた。



私は疑問に思ったことを聞いた。



「何で部屋の鍵閉めたの?」



やっぱり私を閉じ込めるためだったのかな…。



「昨日俺が撃たれたろ?千花1人で外歩くのは危ねぇから部屋から出ねぇようにと思ってよ」



頭に?が浮かんだ。



確かに撃たれたのは叶斗だけど、私が1人で出歩くのとは関係ないような…?



叶斗1人での方が危ない気がする。



「それなら叶斗の方が危ないんじゃないの?」



「俺は仕事あるから、出なきゃならねぇだろ」



「うーん」



「それに死ぬなら俺だけで十分だろ」



そう言った叶斗を叩いた。



パシン!と音が響く。



「…冗談でも……死ぬなんて、言わないで!」



「悪ぃ…そういう意味で言ったんじゃねぇよ」



また泣き出した私を優しく包み込んでくれる。



「独りにしないでって……言ったばっかじゃん」



「そうだな…」



今の私に死ぬという言葉は、禁句だ。



そのつもりがなくても、私から叶斗を取り上げるのだと、判断される。



昨日の光景が頭から離れない。



いつか…いつか、叶斗は私の知らない所で勝手に死んでしまうのではないか……。



目の前で死なれても困る。



叶斗から流れる血は見たくない。



叶斗はこの世に必要な人間なの…。



そんな人を死なせたくない…。



社長も組長もやってるのに…突然死んだら誰が叶斗の穴を埋めるの?



誰が私の心を満たすの?



「お願いだから…………独りはやなんだよ…」



「あぁ」



抱き締め返し、私は声を出して泣いた。






* * *






過去は過去でしかないはずなのに。



それに縋る私を許して欲しい。



1番辛いのは過ぎ去った幸せは…戻らない。



考えたくなかった、受け入れたくなかった。



受け入れてしまえば、居ないことを示すにしか過ぎないのだから…。

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