第49話

叶斗side




家に帰り、扉を開けた瞬間目を疑った。



扉には鍵をかけ、俺が帰るまで開けないようにしていた。



昨日狙われたってのに外に出せるわけねぇからな。



それなのに…。



「朱羽!千花見たか!?」



「部屋で寝ているかと…」



「いねぇんだよ!?」



「……はい?」



「窓から出てったんだっつの!1人で出歩かせるな、探せ!」



「かしこまりました」






* * *






なぜ逃げる。



何が不満だ。



「千花様!!」



朱羽の声の方に向かう。



「朱羽、いたか!?」



「ヒッ!?」



見つけた千花は怯えてた。



「千花、帰るぞ」



「やだ、やだやだ…離して!」



「千花!!」



ビクッと肩を震わせ、座り込む。



「ごめんなさい、ごめんなさい……1人で出歩いてごめんなさいっ」



堕ちてるな…。



「俺が分かるか?」



「……殺さ…ない、で……」



やはり頭を守るか…。



「俺はお前を殺さない」



「やだやだ!!連れてかないでよ!私誰とも話してないんだよ!?」



「千花…」



「1人で出歩いたことは謝る……。だけど、だけどっ…」



「落ち着け」



近付こうにも、身体が拒絶反応を見せてる。



「何もしてない……何もしてないからっ………だから私を殺さないでよ……」



「あぁ、殺さねぇよ。いいから俺を見ろ」



この状態じゃ何を言っても拒絶される。



ゆっくり顔を上げて、視線を合わす。



もう一度聞いた。



「俺が分かるか?」



「……」



震えながらも首を横に振る。



「……壮じゃ、ない…の?……うっ!?」



その名前が出てきた瞬間、無意識に首を掴んでしまった。



「叶斗様!?」



「…っあぁ……うぅ」



そいつの名前を二度と聞きたくない。



俺の前で出すな…。



爪が食い込み、血が流れてる。



「叶斗様、それ以上は…」



「黙れ……俺の千花なんだよ」



「それは…そうですが……前にも同じことを………」



「あ゛ぁ゛?だから何だよ、俺のもんだっつってんの。てめぇに口出しされたくねぇんだよ」



本当に殺してやりたい。



「やっ…………め…」



気絶寸前で手を離す。



「はぁっ、はぁっ、はぁっ、…ゴホッゴホッ」



「千花、様…」



「ネェ…………コロシテ?」



この状態から戻す方法はわからねぇ。



「ソシタラネ、イマヨリラクニナルンダヨ?」



「そりゃそうだろ。だけどよ千花、俺を置いてくのか?」



「……」



「俺はお前といたい。愛してるからこそお前と過ごしたいんだ。違うか?」



「……誰?………私を、愛してるの?」



「あぁ、お前を愛してる」



「そ、なんだ……」



なぜか悲しそうな顔をされ、伏せられた。



伏せられた顔は一向に上がらない。



暫く待っていると、嗚咽が聞こえ、泣いているのがわかる。



「…っく…うぅ、っ……私をっ、愛して…くれる人が………いるのっ…?」



「ここにいるだろ」



「なんで、なんで……愛してくれるの?」



大粒の涙は止まることを知らない。



千花の綺麗な顔を歪ませる。



「理由なんてねぇよ。愛したいから愛す、それ以上でも以下でもねぇ」



俺の『愛し方』は他と違う。



そこら辺のやつらが考えるような甘ったるい愛なんて反吐が出る。



【恋人ごっこ】なんて気持ち悪ぃ。



手に入れるためなら、周りのやつは全員殺す。



「…叶斗っ、ごめん…なさいっ……」



そう言い抱きついてきた。



「千、花?」



俺がわかるのか?



「叶斗、叶斗っ…」



俺の名を呼ぶ千花を普段と同じく撫でる。



「私の傍から……離れないでっ」

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