第39話
「千花、今日は家で食うぞ」
「どうして?今日もね美味しそうな場所見つけたんだよ!叶斗と一緒に…」
「…お前、妊娠してんだろ」
「……ぇ」
叶斗から【妊娠】と言う言葉が出てきて思考が止まった。
「いや、さっき確信に変わったって言った方がいいか?薄々体調の変化には気付いてたけど、自分から言ってくると思ってな」
「な、なんで……私、妊娠なんて、して…ないよ?」
否定したい…。
自分で認めたくない…。
あんな紛いもの…私と叶斗に必要ない……。
「なら、これはどう説明すんだ」
手に持ってたのは【妊娠検査薬】。
「なんで、そんなもの…」
「洗面所に置きっぱなしだったからな」
全て片付けたと思っていたのに、テンパってて置いてきたんだ…。
慌てて弁明を考える。
「ち、違うよ!そんなものデタラメじゃん…大体病院でちゃんと検査してないし、私が妊娠なんて…」
「これ、朱羽に買わせてきただろう。俺は買った覚えはねぇし、千花の口から聞いたこともねぇ。それに、お前の体調に気付けねぇ程俺は馬鹿じゃねぇよ」
やだ、やだ…。
捨てる……ステラレル。
叶斗、叶斗、叶斗…。
「…産みたいか?」
「嫌だ嫌だ!産みたくない!…だって人、だよ?育てられないし、育てたくない…。それに……」
そこで言葉が詰まった。
本当にこんな事を言ったら確実に捨てられる。
「それに?」
「それに……」
促されても言葉が続かない。
「捨てられるとか考えてんだろ?言えよ、俺はお前を捨てねぇから」
「……自分の手で…………殺すと、思う」
冷静だったのは叶斗の方。
叶斗にとって嬉しいことかもしれないのに。
母親になるかもしれない私は自分の手で子供を殺してしまうかもしれない…。
そんな女を隣に置いておきたいか?
私が男なら捨てる。
静かに私の元に歩いてくる。
「…あぁ、それでいい」
顔をあげられ、私の言葉に否定しなかった。
「叶斗は……子供、いらないの?」
「はっ、こんな親持つ子が可哀想だろ?俺は
「でもっ」
「人殺しの親なんて子供からしても御免だろ。少なくとも俺は…そう思う」
人…殺し?俺は…そう思う、?
人殺しは分かるけど、俺はそう思うって…どういうこと?
叶斗の親の話は聞いたことないから知らない。
私と出会う前のことなんて一切喋らない。
叶斗自身のことは聞いてはいけない気がして、何も聞かなかった。
「明日、朱羽と病院…行ってくるね」
「…あぁ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます