妊娠

第38話

「叶斗、仕事いってらっしゃい」



「あぁ、行ってくる」



いつも通り叶斗を見送る。



パタンと扉が閉まると口を抑える。



「うっ!?」



吐き気を催し、トイレへ駆け込む。



朝飯が戻される。



平気な顔して叶斗の前にいるのが辛い。



「…はぁ、はぁ、」



「千花様…」



「朱羽……頼んだもの買ってきて、くれた?」



「はい、それはありますが……体調が優れないのでしたら叶斗様に…」



「言わないで!叶斗に言わないで…」



何を思ったのか、言おうとしていた言葉を飲み込み朱羽は言った。



「……頼まれた物は机に置いておきます。何かありましたらお呼びください」



最近吐き気が凄い。



頭痛もするし、あまり歩きたくない。



それに気付きたくなかったけど、生理が1ヶ月も来ない。



もしかしたら、もしかすると思って朱羽に頼んで買ってきてもらった。



本当にそうだったら、なんて言おう。



少し吐き気が治まり、机に向かう。



【それ】を手に取り、トイレに篭もる。



線なんて、すぐに出た。



「…っ」



何本試しても同じ結果。



「…いやっ」



信じたくなかった。



こんなの嘘だと言って欲しい…。



「うぅ、ふっ……っく」



命を授かってしまった…。



信じたくなくて何度やっても線は出てるんだ。



結果は全て【陽性】。



考えれば考えるほど、吐き気が増す。



「うぅぅ……ぅあぁ、っあ…」



命が…命が私のなかにいる。



本当なら喜ぶところだろう。



嬉しいと思うのが普通だろう。



だけど、私は違う。



私自身が望まれて生まれた子じゃない…。



アイツらの血が入ってる。



気持ち悪いとしか思わなかった。

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