第37話
「千花、飯食いに行くぞ」
「うん!今日はどこ行く?」
ケロッと記憶が戻る前の私に戻った。
「行きたい所ねぇのか?」
「うーん、叶斗こそ私生魚食べれないし、魚食べたいと思わないの?」
「思わねぇな」
「そしたらそしたら、このチーズケーキあるお店行きたい!ネットで見つけて美味しそうって思ったの!」
「飯じゃねぇのかよ」
「違うよ!デザートに出てくるの!」
「そうか」
優しく撫でてくれる叶斗の手が好き。
今の私は部屋に1人で、叶斗が帰ってくるのを待ってる。
叶斗の仕事に着いていきたいと思わなくて、1人で待ってると言った。
叶斗はどうしても私を仕事場に連れていきたがってたが、私の意見を聞いてくれた。
1人でいることについて、扉の向こうに朱羽がいる。
叶斗の側近なのに、私の傍にいることの方が多い。
私としては、近くにいてくれて嬉しい。
すぐ頼れるから。
そして、お昼は必ず叶斗と外食。
ファストフードやファミレスも嫌な顔せず、行きたいと言えば連れてってくれる。
嫌かも?と思い聞いた事があるが、嫌じゃないし、私が行きたいと言えば連れて行くとのこと。
「準備出来たか?」
「うん!」
「行くぞ」
* * *
だけど、夜は違った。
「嫌だ嫌だ、やめて…」
毎日毎日魘される。
「千花、落ち着け」
私は昼寝ができるからいいものの、仕事のある叶斗の睡眠時間を削ってる。
私が寝るまで抱きしめて、背中をさする。
「…っく……うぅっ…」
「大丈夫だ」
心地良い叶斗の心臓の音が聞こえると、自然と眠りにつく。
* * *
そんな日々が続き、叶斗の誕生日、1年記念日、私の誕生日まで祝うことはなく過ぎていった。
叶斗の誕生日に着るはずだった新しい服、記念日は旅行に行きたいと思ってた、私の誕生日だって毎年祝うと約束されていた…。
それがなくなったのは全て私のせい。
私の精神が不安定すぎて、叶斗に迷惑をかけた。
叶斗と幸せに…なんて今更叶わない。
壊れて記憶が曖昧な私が、そんな生活を出来るはずがない。
だけど、私の支えは叶斗だから。
叶斗しか我儘…言えないから。
どんなに壊れてても、どんなに狂ってても…本当に嫌なら私を殺せる。
私の心を満たせるのは叶斗しかいない。
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