第35話

千花side




『なぁ!てめぇが誰のもんかわかってんのかよ!?』



『何度言えばわかんだよ。てめぇは俺の女だ。誰とも喋んな、誰とも関わんな。わかったかよ!』



『わかったっ……わかったから、もうやめ、て…』




「…っ、はぁ…はぁっ……」



「大丈夫か?魘されてたぞ」



さっきの夢が…感覚が鮮明に残ってる。



「ごめ、なさいっ……ごめんなさ、い…殴らないで、もう…殴ら、ないでっ」



「千花…」



「ヒッ……いや、いやだ……殺さないでっ、お願い…いやっ」



「俺は殺さねぇ、大丈夫だ」



優しく背中を摩ってくれる。



だけど、それが叶斗なのか壮なのか区別出来てなかった。



「……ぁぁ…ぁ…わ、たし…守ってる…約束、守って、家にいるから」



「…」



無言になり恐怖した。



怒らせた、殺される。



「ごめんなさい、ごめんなさい……ごめんなさい…」



謝罪しか口から出なくなった。



涙がボロボロこぼれ落ち、嗚咽が止まらない。



反省するまで殴られる。



「千花」



名前を呼ばれ、顔を上げる。



「お前の目に映ってるのは誰だ」



その問いに私が答えたのは「……か…な、と」と。



優しい声色に私はそう答えた。



「そうだ。その名をもっと自分に刻め」



「かなと……叶斗、叶斗…」



今度は名前しか呼ばない私の口に叶斗の指が当てられた。



「千花、俺はお前を愛してる。お前はどうだ?」



「ぁっ……ぅっ…」



「言えねぇのか?」



「…愛……し、てる。私、も……叶斗を愛してる」



「あぁ」



私に口付けをしてきた。



「んっ…ぁっ……んぅ」



段々と深くなるキスに私の声が漏れる。



「はぁ…ぁっ」



銀の糸が引く。



見上げた叶斗は満足そう…。



お互い交わす言葉はなく、私は叶斗の腕の中でまた眠りについた。

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