第34話

叶斗side




「叶斗!」



部屋に着くなり、駆けつけてくる。



優しく抱きしめる身体は震えてる。



「大丈夫か?」



「……大丈夫だから、もっと抱きしめて…撫でて欲しい」



「あぁ」



暫くした後、スースーと規則正しい寝息が聞こえた。



「寝た、か」



ベッドまで運ぶ。



「朱羽…何があった」



「瑞世壮が接触してきました。たまたまあの場にいたと言うのは嘘であると思います。本日は平日。学生があの時間に出歩いていることは有り得ません。何か千花様によからぬ事をしようと考えているのかと思います」



「まぁそうだよな…少しの間お前と2人、外出は禁止だな」



「申し訳ありません。私の力が及ばず…」



「そんな事どうでもいい。アイツと接したってことはまた千花の様子がおかしくなる可能性がある…」



「はい…」



また千花が苦しむのか…。



「なぁ、朱羽……千花に殺してもらうのはどうだ?」



「それは…」



言い淀む朱羽を見て、我に返る。



「馬鹿げてたな…俺が決めることじゃねぇか」



壮との記憶だけがなくなってたのは相当の理由だろう。



どんな過去なのか直接聞きたいが、消えた記憶をわざわざ思い出させることはしたくない。



全て俺で支配されればいいのに……。

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