第31話

「うわぁ…」



近場の海。



「綺麗だね、叶斗」



「………あぁ」



「無理に言ってごめんね。車で待ってていいよ。私1人で行ってくるね」



表情は暗く、辛そうな顔をしてる。



海が本当に嫌いなのかも?と私は思い、1人で向かった。



チャプ…と手を入れる。



早く記憶戻らないかな…。



そんな事を思ってると、ズキッと電流が走ったみたいな痛みが頭を襲った。



やっぱり海に来て正解?



記憶が戻ってくるかな?



波から離れ、座って海を見渡す。



「私…何で記憶なくしたんだろう…」



生活して、わかった事は…私は叶斗に愛されているということ。



私はというと、記憶がないため叶斗を愛せないでいる。



愛が何なのかわからない。



ただ叶斗を不安にさせないように口に出して言う。



少しでも不安を取り除かないと、叶斗は壊れてしまう。



「千花…帰るぞ」



呼ばれて振り返る。



「叶…斗?」



バチンッ!と音が聞こえるくらい、目の前が光り、呆然とする。



「…叶斗……叶斗!!」



叫びながら追いかける。



「あ?」



ドンッと倒れる勢いで抱きつく。



「叶斗っ……ごめん、ごめんね…」



「んだよ…記憶でも戻ったか?」



「うんっ…戻った…」



「そうか…」



私の記憶が戻ったというのに、叶斗の顔は曇ったまま。



「叶っ…」



「さっさと帰るぞ」

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