第16話

叶斗side




「千花様!」



朱羽が千花を呼ぶ声がした。



近くで割れたグラスと目の前の女には目もくれず、朱羽の元へ。



「朱羽、どうした」



「千花様がこの会場から出ていかれて…」



「どこに行った」



「それが…行き先が分からず」



数分すれば戻ってくるだろうと思い、朱羽を追わせなかった。



「亜御那さーん、続きは?」



「んなもんあるわけねぇよ。消えろ」



女は放った言葉に怯え、離れていった。



甘ったるい声には反吐が出る。



キツい香水は俺を不愉快にさせる。



「千花様、大丈夫でしょうか?」



「…30分。来なかったら探しに行け」



「かしこまりました」



そんな事はないと信じたかった。




しかし、千花は戻ってこなかった。



会場を途中で抜け出し、1時間、2時間、周りを探した。



結局見つけることはできず、時間だけが過ぎた。



そして俺の中で『監禁』の2文字が頭を支配する。



俺から離れた罰だ。



もう二度と離れられねぇようにしてやるよ。



「叶斗様、もしかすると先程の会場での出来事のせいでは…?」



「あぁ゛?」



「先程会場で女の人とキスされましたよね?そのせいかと…」



「俺はされた側だ」



だがもし、それならば戻らない理由になる。



キスされたよりもしたことは事実だしな。



突然の事でされるとは思わなかった。



「千花様のこと、どうしますか?」



「いねぇんだ、どうすることも出来ねぇだろ」



「申し訳、ありません…」



朱羽を責めても解決はしない。



早く探し出さねぇと。



「人集めて探し出せ。わかり次第連絡入れろ」



「かしこまりました」






* * *






先に壊れたのは俺の方だった…。

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