披露宴

第14話

千花side




「千花様、叶斗様がお待ちです」



「いーやーだー」



「そんな事仰られても楽しみにしてたではありませんか」



「こんなに人がいるなんて聞いてないもん」



先に叶斗は披露宴会場にいる。



私は人が多いところは嫌いで駄々を捏ねている。



「千花様、何があっても必ず叶斗様の元へお連れします」



「……手、握って」



「それはできません」



「なら行かない。叶斗がいても行かない」



朱羽が握らない理由はわかってる。



叶斗に見つかれば朱羽は怒られる…否、殺されるかもしれない。



むぅっと不貞腐れる私に朱羽は手を差し出した。



それにぱあっと顔が明るくなる。



「叶斗様にはちゃんと自分から説明してくださいね?」



呆れたように言われた。



「うん!」






会場に入った私は周りから変な目で見られた。



ヒソヒソと話す声。



その内容は聞こえないものの、私の方を見て言っている。



無意識に朱羽の手を強く握った。



「千花様、大丈夫ですよ」



「…い、いや……戻ろ」



私は場違いなんだと再確認させられる。



ぶつかったはずみで、握っていた手を離してしまった。



「しゅ、朱羽!?…あっ!」



足を引っ掛けられ、転んだ。



クスクスと笑い物にされる。



その時パリーン、と割れる音が聞こえそっちを振り向く。



「…ぇ」



自分の目が信じられなかった。



「千花様!」



朱羽の声が後ろからしたが、私はその場からすぐに離れた。

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