第13話

叶斗side




千花が着付けに行って30分。



いくらなんでも遅すぎる。



「試着室まで通せ」



「女性専用ですのでお通しすることは出来かねます」



「…は?」



『専用』という言葉に引っかかった。



いつも利用する時は何も言わず通される。



それに今はジェンターレスもあり、俺の行く場所は全て朱羽にチェックさせてる。



ふと視線を奴に戻すとニヤッと口元が笑ったのがわかった。



「てめぇ、なにか隠してんじゃねぇだろうな」



「い、いえ、何も隠してません」



「殺されてぇか?」



銃を突きつけたらすぐ吐いた。



「す、すみません!ご案内致しますので命だけは、」



「さっさとしろ」



この店終わりだな。






「こ、こちらの部屋になります」



ノックをしたが、中から返事は無い。



「千花?終わったか?」



扉を開けると目の前の光景に目を疑った。



「あ、亜御那様!?…あの、これは…」



「死ねよ」



女を蹴り、千花の元へ行き抱きしめる。



「……ぁぁ……ぁ」



身体は震えていた。



ドレスは切り刻まれ、所々血が出ている。



生きてるのに生きてないみたいな…身体は冷たかった。



「大丈夫か?」



「…ぁ……ぁ」



顔を覆い、俺の言葉は届かない。



一緒にいて分かったことは、黒く染まると俺を理解出来る時と出来ない時がある。



理解出来ない時の方が多い。



反応がないため、千花の中に俺がいないことが気に食わなかった。



「すぐ帰ろうな」



千花を抱え、店を後にした。



「家」



「かしこまりました」



車に乗せ、千花の中に俺を刻む。



「千花、俺だ。戻ってこい」



「…ぅぅ、ぁ……」



「叶斗、だ。呼べ」



「……か、な……と」



「そうだ。今目の前にいんのはお前の男、叶斗だ」



目を見ても焦点が合わない。



「かな、と……叶…斗」



「あぁ」



何度か虚ろ虚ろに呼んだ後、やっと俺を見てくれた。



「叶斗っ!叶斗!」



「ん、大丈夫だ、落ち着け」



優しく頭を撫でる。



「家着くまで寝てろよ」



そう言うとすぐ眠った。






後日、他の店へ新しいドレスを買いに行った。



「叶斗、これ良くない?」



「俺はこっちの方が似合うと思うけどな」



「ならこっちにする」



時間ねぇからオーダーメイド出来ねぇけど、まぁ千花ならなんでも似合うな。



「試着室へご案内致しますね」



千花に何かあってからじゃ遅いため、1人で試着室へは行かせない。



「どう?似合う?」



「あぁ、似合ってる」



傷が痛々しい。



首にも付いてる傷にそっと触れる。



「叶斗?」



「…悪い」



「私は大丈夫だよ。痛くないからね」



「…あぁ」



傷物になるなら部屋から出したくない。



監禁…なんて言葉が頭をよぎった。

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