第9話

お正月も過ぎ、叶斗は仕事を始めた。



私はその間ずっと部屋にいる。



朱羽と一緒なら外出はできる。



だけど特に外に出ても行きたい場所や見たい所なんてなく、部屋で1日過ごす日々。



3食必ず出されるし、言えばお菓子など用意してもらえる。



ソファーでテレビをぼーっと見てると今日誕生日の有名人特集がやってた。



それを見てか後ろで着替え中の叶斗が聞いてきた。



「そういや、誕生日聞いてなかったな。いつだ?」



答えたくなかった。



誕生日なんて私には関係ないもの。



祝われた記憶が無い。



「せーんか?」



「…言いたくない」



「なぜ?」



「嫌い…だから」



私の表情から察してか、強引に顎を引かれ、目を合わせられた。



「今までの記憶は消せ。俺だけにしろ」



有無を言わせない、絶対的なその目に口を開いてしまう。



「…1月…7日」



「は?もっと早く聞いとくんだった、終わってんじゃねぇか!?」



「叶斗は?」



「俺は12月15日」



出会う2日前…か。



「行きたい場所か食べたいもの考えとけよ」



「どうして?」



「千花の誕生日祝うんだよ」



「…祝わなくていい」



「そう言うなって。祝われたくなくても行きたい場所くらい考えとけよ。21時くらいに帰ってくるからな」



パタン、と扉が閉まり静寂になった。



「…行きたい場所も食べたいものもないのに」



スマホ片手にベッドに横たわる。



適当に調べてたら綺麗な海が見える場所が出てきた。



だけど、沖縄だし、今は1月。



天気だって安定しないし、寒い。



叶斗の仕事もあるし、近場の方がいいのかな?



「朱羽ー、チーズケーキ持ってきて」



「かしこまりました」



扉の傍にいる朱羽に声をかけ、持ってきてもらったチーズケーキを食べならがら探した。



「千花様、こちら置いておきますね」



「ねぇ朱羽、叶斗はどこが好き?」



「どこが、と言いますと?」



「行きたい場所とか考えとけって言われたんだけど特になくて、探してたら海が見える場所が出てきたんだけど今の季節じゃ寒いじゃん?近場がいいのかなーって」



「千花様からの提案でしたら、何処でもいいのではないでしょうか?」



朱羽はこういう人だ。



私の言うことに否定はしない。



監視なのか何なのか、私の護衛として傍にいる。



過保護すぎる。



「朱羽、私のためにも考えて言って」



「考えるも何も叶斗様は千花様一筋ですし、叶斗様は千花様がしたいこと全て否定しませんよ?」



「わかってるよ…」

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