第8話
あれから数日が経ち、叶斗は全て終わらせてくれた。
これで完全に叶斗の傍にいることになる。
もう普通の生活に戻ろうとは思わなかった。
「千花ー、クリスマス何したい?」
「別に何もしなくていい。家にいたい」
クリスマスだからって特別に何かしたいことはない。
興味が無い。
「そっか〜」
「何かしたいの?」
「いや、千花がそれでいいなら俺は合わせる」
「は?んなことする必要なくね?」
「いーから。俺は千花がいればなにもいらねぇの」
出会ってから年末近かったせいか、叶斗は仕事をしてない。
裏の仕事もやってると前に言っていたのにそれもやってる様子がなかった。
ずっと私の傍にいた。
そのせいか、少しだけ心を開けた。
そして私は元々口が悪い。
そんな所も何も注意せずに隣にいてくれる。
「千花!」
「あ、ごめん。何か話した?」
「いや、大丈夫」
「ん」
黒く染る私を叶斗は頭を撫でて落ち着かせてくれる。
その行動に対して私は何も言わない。
嫌ではないから。
「じゃあさ、イルミネーション見に行かね?」
「うん」
* * *
25日当日。
「ほら、手ぇ貸せ」
私は手を出そうとしなかった。
「どうした?」
理由は手を繋ぎたいとは思わなかったから。
「寒いだろ?」
優しく笑う叶斗。
「…」
例え心を許したからといって、外でそんなことをしようと思えるほど許してない。
「嫌か?」
「…」
「繋ぎたくなかったら袖引っ張ってろ。離れんじゃねぇぞ、離れたら殺すかんな」
「…わかった」
私の嫌がることは無理には強要してこない。
初めて会って手を振り払った時も、止めてくれた。
キスもあれから口にはしてこない。
額や頬にはしてくるけど。
私たちは傍から見たら恋人に見えてしまうのだろう…。
私はどう答えるのが正解なのか…。
叶斗は何を望んでいるのか…。
答えは簡単なのに、心が追いつかない。
* * *
誰にも心を開こうと思わなかった私が開こうとした相手が叶斗だった。
初めてだった。
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