第36話

テヘは動けなかった。


目の前には血だらけで青白い顔のライトが横たわっていた。


ジフンは腕を押さえながら壁にもたれ掛かって項垂れている。



回りにはジフンのものかライトのものか解らないが血で赤く染まったTシャツやタオル、ガーゼが散乱していた。


メンバーはそれぞれ忙しそうに動いていた。

ソングンはジフンのそばに付いている。

シオンはライトの頭を撫でていた。


それに引き換え自分は何をした?

何も出来なかった。


自責の念に押し潰されそうになる。


遠くからスタッフの救急車の到着を知らせる声が聞こえる。


ライトがゆっくりと目を開けた。


目が合うと何を思ったか血だらけの手を差し出して呼んだ。


「テヘ…来て…。」


まるで引き寄せられるかのようにゆっくりと近づき手を取るとライトは口角を上げて静かに語る。


「俺は大丈夫だから…。」


日本語にも関わらず言われたとたんテヘの目から涙がこぼれる。


「あ~。ゴメン。何も出来ない。何もしてない。」


つたない日本語で謝り続けるテヘの頭をライトは引き寄せやさしく包み込んだ。


「うん、いいよ。」


そういうと涙腺が崩壊したかのように大声を上げて泣いた。それにつられメンバー達も涙がこぼれる。


「ジフン…腕。」


「うん…大丈夫。」


「よかった。」


女性が手当てをしてくれ、ライトがゆっくりと目蓋を閉じそのまま意識を手放した。

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