第29話
アゲハの背中に新たな赤い線状の傷がつく。と同時にアゲハは短い声をあげた。
男は何度も鞭をアゲハの体に打ち付け、アゲハに何か語りかける。
だがアゲハは何もしゃべらなかった。
男は鞭を持ったまま数歩後ろに下がり回りの男達に顎で合図すると容器に入っていた液体をアゲハの背中にかけた。
瞬間、アゲハが大声で叫んだ。
また、始まった。
共鳴する。
頭の中に勝手に入ってくる悲痛な声。
誰にも止められなかった。
サイレントノイズを使うテジですらシャットアウトできなかったのだ。
体は勝手に動いていた。
ヨウのテレポートで仲間を呼び寄せ、
地下に入り込み、迷うことなく到着。
回りの男達を殴り飛ばしアゲハを救出した。
気を失ったアゲハを肩に担いで仲間達と一斉に移動する。
力を使いすぎた事と共鳴による脳内のダメージによりサジャは戻った後、
しばらくは安静にする必要があった。
ドバイの仲間の助けでアゲハも治療を受けた。
アゲハの背中には肉が見えるほど腫れ上がり皮が割けていた。殆ど皮が残っていないのかヒーラーですら顔をしかめながら力を使ったが一度では治せなかった。
許せなかった。こんなに憤りを感じたのは初めてだった。
何回かに分けて治癒を施し、もとに戻すまでに一週間ほどかかった。
だがその間もそれからもしばらくは目をさますことはなかった。
日本支部のボス、カトリから任務について聞いた。
あまりにも勝手な理由に怒りは押さえきれず報復をしてやった。
アゲハが目をさましたのは全てが終わり、日本につれかえった数日後だった。
当時の事を思い出しながら、アゲハの横顔をチラッと見た。
だからこそ…。
もう一度気を引き締め集中することに専念した。
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