第87話

情事を終えたあと、すぐに私の隣に倒れ込んだ彼の額にそっと手を当てる。



「……っ、新次郎さん」



やはり、思った通り…すごい熱だ。そのせいで体温が高くて…いつもより息が荒かったんだ。




「……なに?悪いけど…寝みぃから、これ以上は…抱けねぇー…」



「とりあえず…服着ましょう」



「いいって、このままで。もう寝るから…ちょっと黙って……」




よほど具合が悪いのか、今にも眠りに落ちてしまいそうな彼に…申し訳ないと思いながら勝手に下着を着せて彼の部屋着は寝室に何着か用意されているのは知っていたので、それを半ば強制的に着せてみた。




「……すげぇ…雑だな。なに、お前…俺のこと嫌いなの?」



トロンとした目で私を見つめる彼は、やはり高熱があるみたいで、、苦しそうに肩で息をしている。




「新次郎さん、体調悪かったんですか?すみません…私、すぐに気付いてあげられなくて、」



「別に…お前にそーいうの、求めてねぇから」




辛そうにしている彼を見ていると、こちらまで苦しくなってくる。私は自分のことばかりで…彼の体調のことを考えてあげる余裕なんてなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る