第84話

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宣言された通り…毎日のように顔を合わせていた新次郎さんがここ三日ほど姿を見せていない。



あの家を出たら他人。見掛けても声を掛けてはいけない。そういう約束だったので連絡を取るのも気が引けて、ただ彼が帰ってくるのを願う日々が続いた。




四日がすぎた頃、ピピピッ…と玄関から電子音がして、思わず寝室から飛びだして玄関まで走った




「……あれ、紬葵…起きてた?」



駆け寄った私のことを見て笑った新次郎さんの顔には…四日前には無かった大きな切り傷が増えていた。




殴りあったとか、事故にあったとか……多分そんなんじゃない。鋭い何かで刺された、みたいなそんな傷に見えて…思わず手で口元を覆った。




「んだよ、そんなに酷い?俺の顔」



全然、気にする様子もなく…欠伸をしながら私に近付いてくる新次郎さんは目の前で足を止めると




「起きてんなら、俺の相手シてくれる?」




いつものように楽しそうに口角を上げて私を見つめると、その場で唇を塞がれた。壁に身体を押し付けられ…呼吸が出来ないほどの深いキスに、なんとも言えない不安が押し寄せてくる。




──…何か、あった?




普段なら、帰ってきたら絶対にまずシャワーを浴びる新次郎さん。こんなふうに余裕の無さそうな彼を見るのは初めてで戸惑ってしまう。

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