第83話
「……んだよ、寒い?」
「いえ、そうではなくて……」
「なんだよ…どーした?」
「……寂しいです」
「……お前なぁ、」
「二度と会えなくなるのは、寂しい」
さっきはすぐに出てこなかった"寂しい"の四文字が簡単に口から飛び出したことに、新次郎さんも呆れている様子だった。
「お前、無意識に人の心を掻き乱す天才だな」
「……そんな才能があるとは思えません」
「じゃあ、俺の心を乱す天才?」
グルン…っと、彼によって身体を回転させられ、向かい合うようにしてお互いの目を見つめ合う。
「…今すぐって訳じゃねぇから、そんな顔すんな」
「いつかは、そうなるってことですか?」
「まぁ…そーなるだろうね。元々俺とお前の関係に名前なんてもんは存在しない…紬葵は確かに俺のトクベツではあるけど、お前と俺が同じ未来を生きることは絶対に…無い」
ハッキリ無いと断言されてしまい、堪えきれず流れた涙を…新次郎さんの指が掬ってくれる。
「だからその分、いま一緒に居られる時間…大事にしよーな?紬葵…」
涙に濡れた頬にキスを落としたあと、身体を起こして私の上に覆いかぶさった彼は…私の肌に沢山の紅い痕を残していく。
その痛みさえも愛おしくて、永遠に終わりが来なければいいのに……っと切に願ってしまう。この気持ちを伝えられる日は、おそらくこないだろうけど…彼の言うように今を大事に生きようと強く思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます