第82話

「……寂しくないです」



「あぁ…そう。冷てえなぁ、紬葵ちゃんは。」



「でも、会いたいです。毎日…新次郎さんに早く会いたいな…っとは思ってます」



「あのなぁ…人はそれを"寂しい"って言うんだよ」



「じゃあ、寂しいです」



「なんだお前、かわいー奴」




正反対の世界を生きている。前に彼は私にそう言ったけど…ここでこうやって抱きしめあっていると、そんなことは本当にどうでも良くなる。




「俺は良い奴じゃないからね。やるって決めたからには徹底的にやらねぇと気がすまねぇ人間なんだよ。」



「……身内の誰かを裏切るんですか?」



「いや?裏切るっていうより、追い出す?もう二度と戻って来られねぇように…俺が兄貴の居場所を奪ってやるつもり」




王座奪還、と言っていた例の…?それが何を意味することなのか不明だが、彼の中では一大決心をした…というような印象を受けた。




「けど、そーなったら今度は俺があの屋敷を出られねぇ事態に陥るっていう…面倒な立ち位置なんだよな。会う頻度が減るどころか、もう二度と会うことはねぇかもな」




二度と会うことは無いという言葉に、思わず身体を揺らして反応してしまった。

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