第75話

「……そんな驚く?怖ぇならそんなモン観るな」



腕を伸ばしてリモコンを握った新次郎さんはそのままテレビの電源を落として再び背後から私をキツく抱きしめる。




「あ、あのっ……苦しいです」



「夜更かししてる紬葵が悪ぃんだろ。いい子で待てしてる約束はどーしたよ?」



「この時間になると目が覚める体質になってしまったみたいで。」



「なんだそれ、可愛すぎんだろ…お前」




後ろから身を乗り出してきて、ちゅっと私の頬にキスをしてから私と目を合わせた彼は─…




「─…ただいま、紬葵」




なんて言って笑うから、、




「おかえりなさい、新次郎さん」




って…笑い返すしか無くなるわけで。帰ってきてくれたことに舞い上がり、すぐにでも抱きついて彼がここに居ることをちゃんと身体で感じたいところではあるが─…




「って…あのっ、退院するにしては早すぎませんっ?!まさかまた…抜け出して来たわけじゃ、」



「いや、ちゃんと退院して普通にもう働いてるけど?寝たきりでボーッと一日過ごすなんて、性にあわねぇんだよ。動いてる方が早く治る」



「……そんなわけっ、」



「んだよ、紬葵は俺に会えて嬉しくねぇの?」



「そういう訳では……」



「それとも俺、病院で夜な夜な看護師とイケないことでもシて…楽しい入院生活を送るべきだった?」




……そんなこと、言わないで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る