第73話

「紬葵と早くヤりてぇから、速攻で退院してくる」



「何言ってるんですか、真面目にっ」



「いやマジで一番効くと思うんだけど、一回ヤって帰ってもいいかな?」



「無理に決まってるじゃないですか!もうそろそろ戻ってください…お願いします」




寂しくないわけじゃない。でも今の彼は治療が必要だということは目に見えて分かる。ここでは補えない…早くちゃんとした治療をっ…





「そんな顔されたら、置いていけねぇだろ」




もう、ほんとにこの人はっ…どこまで私のことを虜にすれば気が済むのだろうか。




「明日から、ちゃんと返すようにするから…帰る前にお前も俺に連絡しろよ?無かったらまた抜け出して俺、ここに帰ってくるから」




本音を言えば帰ってきて欲しい。でも今はまずちゃんとケガを治して欲しいから─…




「……いい子で、待て…してます」




傷だらけで会いに来てくれた新次郎さんのことを─…信じきれなかった自分のことを恥ずかしく思った。





今度帰ってきてくれた時には笑顔で出迎えてあげられるように…寄り道せずにこれからは真っ直ぐこの家に帰ってきて、彼を待つことにしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る