第71話

「んだよ、そんなに俺が恋しかった?」



「……他にっ、いい人が出来たのかなって」



「酷い言われようだな…お前の為に抜け出して来てやったのに」



「っぬ、抜け出して来たって……まさか病院っ」



「夜勤の看護師に金握らせたら余裕で外出させてくれたよ。やっぱ世の中金だよなー」




こんな重症患者のワガママを黙認して外に出すなんて…有り得ない。何かあったらどうするつもりなのだろうか。




「そんな怒んなよ……お前の顔みたらすぐに帰るつもりだったから、そのうち戻る」




戻る、と言われてしまうと…これまた寂しくなってくるので困ったものだ。




「紬葵……顔、見せて」



顔を見せろと言われたので抱きついていた身体を起こし、隠れて泣いていた泣き顔を晒してジッと新次郎さんと目を合わせる。




すると彼は傷のついた手を伸ばしてきて…スリスリと指で私の頬を撫でる。

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