第68話

何かあったのかもしれない、そう思いはじめるととても気がかりで仕事中にもつい彼のことを考えてしまい小さなミスが続いた。




「紬葵ちゃん、珍しいね?なんかあった…?」



「…あ、すみません。ちょっとプライベートで気になることがあって」



「……大丈夫?話くらいなら聞くよ?今日、終わったら飲みに行こうよ、久しぶりにさ!」




前回断ってしまったこともあり、さすがに断りずらくて…仕事終わり典子さんと飲みに行くにした




一人では広すぎるあの家で、帰らない新次郎さんの帰りを待つよりも…誰かと夜を過ごしたいという甘えも少なからずあった。





【今から帰ります。】っと、私が送ったメッセージに既読がつくことは未だになくて。それ以降連絡をとる勇気が無かった私は何度も同じ画面を開いては未読のままの文面を見て落胆する。




─…他に、お気に入りの女の子でも見つけてしまったのだろうか?




それとも…例の大学生の女の子と何か進展でもあって、私は必要では無くなった?




どちらにせよ、”帰ってきて欲しい”なんて言う資格は私には無い。決めるのは彼で…私はそれに従うしかない。初めから対等な関係では無いのだ。

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