第63話

「あー…そう。なるほどね、そーいうこと。」



「……あのっ、」



「もう何も言わなくていい、あとは直接その男に聞くからさぁ…お前は今まで通り何も考えずに真っ直ぐうちに帰ってこい」



「え……遥馬に会うつもりですかっ?!」



「もう二度と紬葵の前に現れることの無いように、ちょっと釘さしておくだけ。お前さっき自分で言ってたよな?二度と関わりたくないって」




……言った、確かに言った。言ったけど、、別に遥馬を脅かしたりして欲しい訳じゃない。ただこんなことがあった、怖かった…って。それだけ聞いて貰えればそれで良かった。




「確かに紬葵の男を見る目はマジで皆無。その点についてはバカな女だなぁ…っとは思うけど、今日遅くなったのもその男に家を知られねぇようにお前なりに色々考えて帰ってきた結果だろ?」




……なんで、分かるの?




「お前、すげぇじゃん。危機回避能力、ばつぐん。本物のバカなら何も考えずに真っ直ぐ帰宅して翌日の朝待ち伏せでもされてるだろーから…お前はバカなんかじゃねーよ、だからもう泣くな」



「しんじろー、さんっ」



「お前の情緒が不安定だと、俺が困るんだよ。俺がいつ帰ってきても万全の体制で出迎えてもらわねぇと…気兼ねなくお前を抱けねぇだろ」



「すみませ、んっ」



「セックスは無理でも、添い寝はデキんだろ?紬葵のデカぱい触りながら寝んのが俺のルーティーンになってんの、分かる?お前ナシじゃ寝れねぇんだよ、分かったらさっさと風呂入ってこい」




最後、ポンポンと頭に手を乗せて私から離れた新次郎さん。彼の体温が離れたことを寂しく思い無意識に袖を引っ張ってしまった私を見て、新次郎さんは困ったように笑うと、、




「お前が寝るまでずーっと俺が後ろから乳揉んで添い寝シてやるから、さっさと入ってこい」




なんて言うから…恥ずかしくなって逃げるようにバスルームまで走った。




私ナシじゃ眠れない、なんて…その言葉がもし嘘だったとしても…嬉しかった。新次郎さんに必要とされるのはどんな理由であれ…嬉しい。

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