第62話
「……紬葵?」
「私っ…馬鹿なんです、ほんとに…馬鹿でっ、」
「…なんだよ急に。そんなもん今に始まったことじゃねぇだろ」
「…医者になるほどの学力がなくてっ、大学も全部落ちて…浪人するくらいならせめて看護師に…って、父に言われてコネで看護の専門学校に入るような…そんな馬鹿でどうしようも無い、世間知らずな人間でっ」
─…知らなかったんだ。恋愛なんてして来なかったから、初めての彼氏…遥馬が普通と少し違うなんて分からなかった。
「だからっ…こんな私のことを”ツムちゃん”なんて言って慕ってくれる遥馬に出会えた時、私みたいな落ちこぼれでも好きになってくれるような人がいるんだって…嬉しくて」
手放したくないと、思ったんだ。彼のためならなんでもしようって思った…嫌われたく無かった。
「あんなに大好きだったのに…何でかなっ、もう二度と関わりたくなくて…逃げたんです。私って結局自分一人じゃ何も出来ないどうしようも無いバカっ、」
「あー…あのさ、話し長ぇんだけど。要するにコレ、例の借金踏み倒した元カレにヤられたってことでおっけー?」
右腕に軽く触れながらそう尋ねた新次郎さんに、ただ黙って頷いてこたえた。
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