第60話

マンションに着いて、走ってエントランスを抜けエレベーターのボタンを連打する。




──…早く、新次郎さんに会いたい



女子の日で身体を重ねることが出来ない、と伝えているにも関わらずなぜか帰ってきてくれた新次郎さん。




理由なんていらないから、ただ会って…顔を見て声が聞けたらそれで良かった。




なのにっ─…




ピピピ、っと鍵をかざして玄関の扉を開いた直後すぐに中から伸びてきた手に腕を引かれ、そのまま玄関でキツく身体を抱きしめられた。




「しんじろー…さんっ、」



「あー…落ち着く。やっぱ紬葵が一番だわ…抱き心地サイコー」



「あのっ…私今日は生理で、」



「そーいうことは、軽々しく口にするもんじゃねぇんだよ。あぁ…そーだ、色々買ってきてやったからこっち来い」




色々買ってきた、と言って私の手を引いてリビングへと向かう新次郎さん。




無造作にダイニングテーブルの上に置かれていたビニールの袋の中には色んな種類の鎮痛剤や生理用品…身体を温める為の美容グッズや食品などが沢山入っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る