第46話
「なぁ、紬葵…」
「……はい」
「間違っても…外で俺を見かけても、声掛けたりするんじゃねぇぞ」
「………はい」
「ちゃんと分かってんのかー?」
さわさわ、っと胸に置かれていた手を動かされて思わず彼の手に自分の手を重ねて動きを制止する
するとその手に指を絡められ…今度は心臓がドクンと飛び跳ねた。
「ここで会うだけの関係なら、お前を俺の世界に引きずり込むようなことは絶対にない…させない。断言できる、だから…外で俺を見掛けても、絶対に他人のフリをしろ。目を向けるのを禁止…分かった?」
──ここで会うだけの関係
そうだ、私は言わば彼に”借金をしている”身。余計な期待をするとあとでとんでもなく辛い思いをすることになるのは目に見えている。
「……了解です」
「ん、いい子だな…紬葵。そろそろ寝るか…って、もーすぐ俺は出ていくけどなぁー」
「…っえ、こんなに早く…?まだ5時前っ、」
「ウチの屋敷に住み着いてる大学生のガキの世話があるからねー…アイツが起きる前に戻らねぇと」
私には分からない。別の場所へ帰ってしまう彼がどんな理由で大学生のお世話をしているのかなんて…きっと聞いても教えて貰えないだろう。
──なら、せめて
「…また明日、寝溜めして待ってます」
これくらいのワガママは許されるだろうか?引き止めたりしないから、明日も待ってるって…それくらいなら、、許される?
「あぁ…いい子で待て、してろ」
そう言って私の首筋にキスを落とす彼の温もりが離れてしまう前に、目を閉じて…眠りにつくことにした。
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