第38話

「……んっ、」



感じたことのある息苦しさと共に、徐々に意識がハッキリとしてきて…重たい瞼を開けば、昨夜と同様に視界いっぱいに映った新次郎さんのご尊顔。




ちゅ…と、わざとらしく音を立てて唇を離した彼はソファーで横になっている私を見下ろし、




「よぉ、紬葵…しっかり寝溜めしたか?」




なんて言って意地悪く笑う。その顔を見て謎の安心感のようなものを感じた私はとんでもない馬鹿なのかもしれない。




「……おかえりなさい、新次郎さん」



「あぁ、ただいま…ってかお前、なんで化粧してんの?なに…まさか風呂入る前に寝落ちしたとか?」




………そのまさか、ですね。




夕飯を食べ終わったあと、ひと息ついたらお風呂に入ろうと思っていたのに…どうやらそのまま寝落ちしてしまったようで。




「あの、新次郎さん…先にお風呂どうぞ、」



「…は?何言ってんのお前。紬葵もまだなら一緒に入るに決まってんだろ」



「………はい?!!」



「ん…おいで、紬葵」




私の腕を掴み強引に身体を起こしては、自身の腕の中に閉じ込めて離さない。




「今日も楽しませてよ、紬葵ちゃん?」




そのまま身体を抱き上げてバスルームに向かう彼の横顔を見上げて、胸が高鳴ったのは秘密。

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