第37話

その後すぐに『っ、新次郎さん』と電話の向こうで彼を呼ぶ声が聞こえて…一方的に切られてしまった通話。




先程の話が本当なら…新次郎さんは一度この部屋に帰宅した、ということになる。




とりあえずキッチンに向かって冷蔵庫の中を確認させてもらった。




「……買い揃えすぎでは?」




多分私の食の好みなんかを知らないから、思いつく限りのものを買い揃えたのだと思われるが─…それにしても、すごい量だ。




ジャンル問わずズラっと並んだ調味料や野菜、とても食べきれないと思われる量のお肉やパンなど全て冷蔵庫に入れられているのを見ると、冷蔵庫に入れてしまえば何でもオッケーだと考えるタイプの人なのか?と思ってしまう。




とはいえ…普段からお弁当を作って持参していた私としては、こんな風に食材を用意して貰えたことはとても有難い。




少しでも彼を悪人かも、と疑ってしまったことを申し訳なく思った。




「お風呂…ゆっくり入らせてもらおう。」




冷蔵庫の横のパネルを操作して…ちゃんとお湯がためられているのか浴槽の近くまで行って確かめた。





お湯がたまるまでの間に、夕飯を作って余ったおかずを明日のお弁当用に取り分けて…お弁当箱が無いことに気が付いた。




明日の仕事終わりに買って帰ろう…と思い、新品だと思われるタッパーが食器棚にあったのでそれを使わせてもらって、一人夕飯を済ませボーッと時間を潰しているあいだに…うっかり、ソファーで寝落ちしてしまった。

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