第36話

「……もしもし、」



『あー…俺。俺だけど』



……こんな詐欺まがいな電話のやり取り、本当に実在するんだな。





「新次郎さん、、ですよね?」




そして私もしっかり名前を呼んでしまう、典型的な詐欺にあうタイプの馬鹿正直者。




『あぁ…あのさ、部屋の冷蔵庫に適当に食材とか調味料とか入れてあるから。キッチン適当に使っていいからちゃんと飯食えよ』



「…っ、え…」



『あと、冷蔵庫の横の電子パネルで風呂の操作できっから。温度調節して今日は湯に浸かって身体温めろよ』



「あのっ…新次郎さ、」



『あー…そうだ。昨日お前が汚したシーツ、張り替えておいたから。今日もちゃんといい子で待て、してろ?』




……その件については恥ずかしすぎて、死ねる




『じゃーなー…』



っと、一方的に通話を終わらせようとする新次郎に慌てて「待ってくださいっ!」と声をかける。




『……んだよ、』




気だるそうに返ってきた返答に安堵しつつ、スマホをギュッと握りしめる。




「な…何時頃、帰ってこられますか?」



『……は?』



「いや…だいたいいつも何時くらいに」



『─…適当、時間とか決めて行動すんの苦手なんだよね。いつ帰っても俺のことを満足させられるよーに、ツムは寝溜めして待っててよ』




……寝溜め?

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