第14話

「そんな地獄に比べりゃ…俺一人に抱かれて、現金は支払わなくていい、なんて。好条件すぎると思わねぇ?」



この人と…身体の関係を持てば、お金を払わなくていいって…そういう事?



「すげぇ単純に計算シたら、毎日50回俺に抱かれ続けたら10日で返済終了ってわけだ。まぁ…さすがにそこまで俺も暇じゃねぇから…一日に50回もヤれる元気はねぇけど」




一日に50回もデキる人が存在するなら是非とも会ってみたいが…今は冗談を言ってられる状況ではない。




それでも…やっぱり気が進まないせいで、返事に困っている私を見ながら…彼は口角を上げて笑うと、、




「─…家、提供してやる。行くとこねぇんだろ?俺の借りてる部屋をお前にやるから好きに生活しろ。借りてるっつっても基本俺は帰らねぇから、一人暮らしみたいな感覚で住めばいい」



「帰らないって…他に家があるんですか?」



「そんなところ。あぁ…でも既婚者ってわけじゃねぇから、そこは安心してよ。もちろん家賃は要らねぇ…俺が帰った時に相手してくれればそれでいーから」




家を提供してくれる、その言葉で揺らいでいた気持ちがあっさりと固まった。





「─…あの、逆にいいんですか?お金じゃなくて、身体を重ねるだけで…本当に、」



「金に困ってるように見えるか?どっちかっつーと困ってるのは欲を発散するところがねぇってことだ。だから俺にとっても好都合なわけ。いちいち後腐れねぇ女を探す必要なく、ヤりたいときにヤれる…って、最高じゃない?」




……ちょっと理解し難いです、その価値観。




「500万でその生活が手に入るなら、全く惜しいなんて思わない。だからお前は金の心配じゃなくて身体壊さねぇように自分の身体の心配だけしてろ─…俺が気兼ねなく抱けるように。」




めちゃくちゃな提案をされていると頭では理解出来ているのに、もうこの話に乗っかるよりほか…今の私に選択肢なんてないように思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る