第41話

いつの間にそんなヤバい話になってんの?って至る結論は、処構わず人のブラウスの隙間から手を入れてきた詠斗によって掻き消される。






「んなっ!!」



 耳元に忍び寄る唇から息を吐かれて、一気に走る鳥肌。



 昼下がりの商社ビル、玄関ロビーで白昼堂々と.....




「こうなってしまった以上、俺だって落とし前は付ける。―――――だから、諦めろ。」



 何を?諦めろって言ってんの。


 

 


「馬鹿!!触るな、離して!!」




 暴れる私を羽交い絞めにして、きつく抱きしめる男は、いったい何を考えているのか。





 


















―――――「伊丹さん大丈夫でした...?」





 なんとか奴から逃れる事に成功した私は、乱れた洋服を戻してオフィスへと戻ってきた。


 直ぐ様奴等の訪問を知らせてくれた同僚が、心配してなのか掛け寄ってきて、私は眉を垂らして視線をずらした。




「うんー。大丈夫。」



 

 仕事を辞めろと言われたが、そこは折れない。意味が分からない。



 いくらなんでも急すぎるし、至った結論は、『送り迎えだけで勘弁して。』



 流石に詠斗と居たら心臓が持たないし、気まずいし~。ので先が思いやられる。




 なんなら、あの時の『孕ませる』発言は聞かなかった事にしたい。



 あの目は本気マジだった。冗談とか抜かす様なタイプの人間じゃないでしょ....。




 それにしても、私が人攫いの対象に入るなんて、本当に恐ろしい世界の住人だ。




 この間観た任侠ドンパチ映画でも、女が攫われるシーンが在ったけれど、本当にあるのか?と疑ってしまう。




 まず、詠斗が私の事など気に掛けなければ、こんな面倒くさい事に巻き込まれずに済んだんだろうな。ってね。

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