第33話

――――後悔したってもう遅い。確かに私は、気の迷いでこの男と寝た。それは事実だ。




 ただ一つ運が悪かったこととすれば、この男が一般人じゃなかった事だ。




 女癖が悪い、真の糞野郎だったならば良かったのに....。








「あの男とやったんだろ。」



「やったけど、何か?」






 アパート前に着くや否や、先に降りた詠斗が私の腕を引いて、部屋の前まで引き摺られながら連れてこられた。



 その質問に含まれる意味なんか理解したくはないけれど、この儘進めば詠斗は間違いなく私を抱くだろう。





 ただ、私も確かめたい事があった。






「....アンタの所為で、いけない身体になっちゃったじゃない!!」



 ぼろぼろと零れ落ちる涙は、羞恥心など捨て去ってのもの。



 この男が....童貞だった糞野郎が、私を抱いた感覚が忘れられないのだ。





 愛なんか無くても、エッチは出来る。



 そうずっと思っていたのに、





――――この男がぶつけてくる、熱い気持ちが行動で示されて、私を欲しようとしている。って考えたくないのに、







「嗚呼、無理。我慢出来ないわ。....抱いていい?」






 “俺がお前をいかせてやるよ”








 それで無理なら、私は詠斗を一生許さないだろう。





 私を脅かす存在なんて消えてしまえ。

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