第91話


帰ってきて眠りについていると、着信音が鳴った


『もしもし』


「着いた」


『冬弥…うつしたくないよ』


寝ぼけ眼でそう言うと、柔らかい声で返される


「いいから開けて」


その声に簡単に意思が崩れてしまう


玄関を開けると、そそくさと冬弥は入ってきた


「大丈夫か?」


『うん…冬弥…』


「ん?」


『うつしたくないよ…』


「さっき聞いた」


『だって本当にうつしたくないよ』


「大丈夫って言ってんだろ?ほら」


私の手を握ってベットに連れて行く


寝かせた私に布団をかけると、サイドテーブルの上に置いた氷水でタオルを濡れしてくれる


『冷たいでしょ?いいよ、自分で出来るよ…』


「友梨」


真剣な顔で私を見つめた


「俺はやりたくてやってんの」


『そうかもしれないけど…』


「とにかく。今は何も気にすんな。ちゃんと治さないと来週クリスマスにサンタ来ないぞ」


『…サンタ?』 


「そう。サンタはいい子にしか来ない」


『来るのかな?』


「来るよ。遅くなるけど」


風邪のドキドキではない


クリスマスに会えると思ったら泣けるほど嬉しかったのだ


『…ありがとう』


「待ち合わせよう?仕事終わったらすぐ会いたい」


『うん!』


「元気な返事だな」


『嬉しい』


「そっか。今日は深夜のラジオまで空いてるから、ゆっくり寝てろ」


『はーい』


氷水で冷えた大きな手を握られながら目を閉じた


冬弥のためにデザインして1から作ったパーカーを渡すことなんか想像して…

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