第87話

歌番組の放送が終わってすぐ、着信が入った


『も、もしもし?』


「友梨?大丈夫?」


さっきまでTVに映っていたはずなのに


放送が終わってすぐ電話をくれたその行動が心をあたたかくする


『マリーさんに言われたの?』


きっとマリーさんが冬弥に私の体調のことを話したんだとすぐに分かった


「うん。熱は?」


『全然ないから大丈夫』


嘘をついた


必死で平然を装った


「ほんとに?」


『本当に。ありがとう』


本当のことを言えば、今すぐ誰かに看病してもらいたかったし、そばにいて欲しいと思った


でも冬弥にうつすのだけは嫌だった


「そっか。じゃあ今から行っていい?」


『えっ!?』


思わぬ言葉に焦りが隠せなかった


会いたい


でも今は会えない


「ダメ?」


『う、えーと…きょ、今日は疲れちゃって…』


下手すぎる嘘


でも冬弥はあっさり納得した


「そっか。わかった。じゃあまた連絡する」


『うん、お疲れ様…』


こんなに熱がなければ会えたのに


悔しくてスマホを握りしめた

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