第77話

「友梨は?」


『ん?』


「兄弟」


『いるよ。鬱陶しいお兄ちゃん』


「何か、自分に言われてるみたいだな」


『こんなカッコイイお兄ちゃんじゃないよ』


「カッコイイって思ってくれてるんだ」


『え、も、もちろん…』


「カッコイイか?イケメン上司と話してるの見ただけで嫉妬してる男が」


あ…夏川先輩のことだ


『やっぱり見てたんだ』


「背も高いし、イケメンだし、仕事出来そうだし」


『うん。確かに』


「俺といるより自然に笑ってたし」


『そうかな?』


「友梨に好意あると思うし」 


『ないない』


「あるよ。見ればわかる」


『ないって。3年間そんなこと言われたこともないよ』


「言えないんだろうな。友梨が鈍いから」


『ええ?何で?』


鈍いなら余計に言うものかと思っていた


「何でも。あの人に惹かれたことはないの?」


『ないよ』


「キッパリ言うな」


『だって、イケメンで仕事できて背が高いから好きになるわけじゃないよ』


「…ハハ。どっかで聞いたようなセリフだな」


芸能人だから好きになるわけじゃないと言ってくれた冬弥 


あの一言が、私の胸に響いたのは確かだ 


『確かに夏川先輩は中身も申し分ない人だけど、好きとかじゃなくて、こんな人になりたいって言う憧れなんだよね』


「なら良かった。まぁ、イケメン上司だろうが俳優だろうがモデルだろうが…友梨は渡さないけどな」


その後も冬弥は何度も唇を重ねて私を愛してくれた


こんなに幸せな時間がいつまでも続けばいい


そう願った


でもその願いは叶わなかった

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