第72話

急ぎ足でバーを出て、目の前にいたタクシーに乗り込んだ


自宅までの道のりで、マリーさんと冬弥から何度も着信が入った


冬弥からのメッセージに目を通す気になれず、メッセージは開かなかった


家に帰ってきてフラフラの足取りでベットにバックを放り投げる


ついこの前は、ここで一緒に寝てることが幸せだった


不思議と涙が出ないのは、耐性があるからだろうか


騙されてもいいなんて、やっぱり思えない


『…バカだな』


放り投げたバックから出てきたスマホを見る


マリーさんからの着信5件

冬弥からの着信12件

冬弥からのメッセージ3件


メッセージを開くと、どれも電話に出てほしいという内容だった


このまま無視するわけにはいかない


でも、何を話していいかもわからない


私は騙されてた


話はそれで終わりのはず


そうこう考えてる間にもスマホは振動した


『マリーさん…』


私が出て行ったあとのことはわからない


でも、マリーさんが冬弥に何かを言ったことは想像できる


私はマリーさんの電話を取った

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