第69話

急ピッチでお酒を飲むマリーさんは、段々酔ってきているように見える


「でね!あたしがそこで言い返すと、ネットにワガママだの何だのと書かれるのよ!ねぇ!あたしワガママかな!?」


『い、いえ!そんなことないですよ』


いや、完全に酔っている


でも、そんなマリーさんが可愛くて仕方なかった


「いっちゃんは分かってくれてるぅってこの前思ったの!あたしいろいろ協力するから、あいつのことよろしくね!」


『は、はい…』


段々話してることが支離滅裂だ


「あ!」


『?』


「ひとついいこと教えてあげる」


ウフフと笑いながらグイグイお酒を飲むマリーさん


「あいつ、意外と嫉妬深いからね!」


『へ?』


「それに臆病なの!」


『…臆病?』


「そー!この前、いっちゃんのこと話してきたとき、何か浮かない顔してんのよ!こんな美人な子捕まえてんのにさぁ!」


顔を赤くして熱弁するマリーさん


「何浮かない顔してんのよ!って言ったらさ、なんて言ったと思う!えーと…何だっけな?いっちゃんとこのイケメンの人!」


『うちのイケメンの人?夏川ですか?』


「あ!そーそー!何かいっちゃんがその人と仲良く話してるの見て落ち込んでんの!」


私と夏川先輩が?


『あ…』


私はすぐにスマホをなくした日のことを思い出した


もしかして、すぐに気付いた冬弥は引き返してくれてたんじゃないか


そこで私と夏川先輩が話してるのを見てたから、夏川先輩の事を知っていた


そう考えれば辻褄が合う


「いっちゃんもさ、あいつと付き合うのは色々考えちゃえよねぇ。わかる!」


『は、はぁ…』


「でもさ、あたしたちはあたしたちで苦しいのよ!」


苦しい?


「相手が一般人だとさ、普通の人と付き合ったほうが、相手は幸せに過ごせるんじゃないかとか考えちゃう!」


マリーさんのその一言で、私は自分の脳天気さに気が付いた


冬弥が芸能人である限り、大手を振って2人では歩くことすらできない


冬弥はきっといつもそれを不憫に思ってる


私が冬弥の立場なら、そんなところを見て思うことはひとつだ


普通の人と一緒にいたほうが、自分といるより幸せなんじゃないか


笑えるんじゃないか


きっとそう思ってしまう


『マリーさん…ありがとうございます』


「いやいや。男のくせにちまちま言ってんじゃないわよ!って言ってやったけどね!自分から言い寄っておいて勝手な野郎でしょー!」


『あはは。でも、嬉しいですよ』


「んー?」


『普通の人なんだなって実感できます』


「いっちゃん…もうなんていい子なの!」


『ちょ、飲み過ぎですよ。そろそろ酔を冷ましましょ?』


「やだぁ!もっと飲も?ね?」


可愛らしく頼まれて、その潤んだ瞳にやられてしまう

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