第68話

それから数日後、私はマリーさんに呼びだされて仕事終わりにとあるバーに向かった


バーは会員制で、簡単には入れないのでお店の前で待って欲しいと言われマリーさんを待った


お店の前でしばらく待つと、かっこ良くヒールを鳴らしながら、夜なのに大きなサングラスに女優帽を被ったマリーさんが現れた


「いっちゃん♪」


い、いっちゃん!?


『あ、こ、こんばんは』


急に親近感の湧くアダ名で呼ばれて焦っていると、マリーさんは私の手を握ってバーへ続く階段を降りていく


「行こ行こ!お酒は飲めるよね?」


『え、はい』


一体マリーさんに何が起きたんだ?


バーの中へ入ると、そこにはちらほら雑誌で見たことあるモデル、俳優など…

とにかく有名人やお金持ちそうな人達がお酒を楽しんでいた


『ま、マリーさん、あの』


「ん?」


『私場違いじゃありませんか?』


見たことのない世界に足を踏み入れたような気がしてオドオドしていると、マリーさんはクスッと笑った


そして、私の耳元で囁いた


「何言ってるの。冬弥の彼女なんだから、自信持ちなさい」


『えっ!?な、なんで!』


「ふふ。話はあと。とりあえず個室行きましょ」


マリーさんは私の手を引いて奥の個室に入っていく


「いっちゃん何飲む?」


『えーと…ビールで』


お酒が届いてマリーさんと乾杯する


冬弥と言いマリーさんと言い…こんなことが私の人生であっていいものかと考えてしまう


「まさか、いっちゃんがあいつの彼女だったとは」


『えーと…あの…』


動揺から何も言えず、ビールの味すらよくわからない


「心配しないで。本人から聞いてるから」


そっか…

私のこと話しておくって言ってたのはこういうことか


付き合っていると言ってくれた嬉しさから、顔がニヤけてしまいそうになる


「聞いてると思うけど、あたしたちは変な関係じゃないから」


『あ、はい…』


「何かあいつから聞かされた時、すごく嬉しくなっちゃって」


『?』


「いっちゃんみたいな人が、友達になってくれたらいいなぁって思ってた。そんな人と親友がまさか付き合ってるなんて聞いたら驚いたし、これはもう運命だとしか思えなくて」


『と、友達って…』


「ダメかしら?」


『い、いえいえ!恐れ多くて…こんな私なんかで良ければ!』

 

もう目がぐるぐるしている気がした

マリーさんに友達になりたいなんて言われて驚かない一般人はいないだろう


「嬉しい!いっちゃんて不思議な人よね」


『そ、そうですか?』


「うん。なんだろう?正義感が強いのかな?」


『いえ…ただのお節介です』


「ふふふ。そのお節介がなければ、あいつとは出会ってないのよね」


お酒を飲むマリーさんの姿は本当に美しいの一言


同じ女性とは思えないくらい


こんなに綺麗な人が親友なのに、どうして私なんかを選んでくれたんだろうと思ってしまうくらいだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る