第65話

結局私は眠れずにただ冬弥の腕の中で夜を明かした


冬弥は寝息を立てていた


そっとベットから抜けだして、1日しっぱなしだった化粧を洗面所に落としに行く


クレンジングしてサッパリした顔をタオルで拭いていると、急に背後から抱きしめられる


「おはよ」


私はタオルで顔を隠したまま返事を返した


『お、おはよう…起きちゃったの?』


「んー。よく寝た」


『じゃ、じゃあちょっとあっちに行ってて?』


「ヤダ」


『あ、顔洗う?じゃあ私があっちに行くから離れて?』


「ヤダ。お願いしますは?」


『お、お願いします…』


「ハハ。冗談だよ。どこで化粧すんの?」


『ん…いつもはリビングでする』


「じゃ、シャワー浴びさせて?」


『うん、どうぞ』


冬弥が私から離れて、タオルから目を恐る恐る出してリビングに向かう


浴室からシャワーの音が聞こえてきて、ホッとしながら化粧水を取り出した


急いでメイクを仕上げていく


寝室に戻ってそそくさと着替えも済ます


ベットを整えて、ここで一緒に寝ていたんだと思い出すと、キスされた感覚が蘇って顔が熱くなる


キスしちゃったんだ…冬弥と


「友梨、終わった?」


扉の向こうの声にドキッとする


『う、うん!』


ドアを開けて立っている冬弥の顔を見ると、余計にドキドキしてしまう


「まだ時間あるよな?」


『うん』


「じゃあ1回タクシーで家に行く。そこから友梨送ってくよ」


『え、いいよ!悪いよ』


「少しでも一緒にいたい。それに、あの満員電車に乗らせるのも嫌なんだよ」


『ありがとう』


そんなに一緒にいたいと思ってくれて、口に出してもらえるのは嬉しい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る