第64話

「友梨、何これ」


『え?何って?』


結局冬弥は私の家に戻ってきた


シャワーを浴びて出てきた冬弥が頭をワシャワシャと拭きながら眉間にシワを寄せた


「ベットあるよね?」


『うん』


「じゃあこの横の布団は何?」


『冬弥の寝るところだよ?』


「友梨~…」


『だ、だって…』


一緒にはいたいけど、やっぱりまだ心の準備はできない言うか…


全てを許してしまった時が怖かった


冬弥は小さな溜め息をつきながら布団を畳むと、ベットに横になって笑って手を伸ばした


「おいで」


『いや!じゃあ私は布団で!』


「友梨」


布団を広げようとした私の腰に手を回して引かれる


その力に逆らえず、同じベットに横たわる形になってしまう


まともに顔も見れず、両手で顔を覆った


ケラケラと笑う冬弥


「化粧も落とせばいいのに。そんな変わらないだろ?」


『む、無理』


スッピンなんてまだ見せれる勇気もない


「分かった分かった。我慢する。ねぇ、あれ何?」


『え?…!』


聞かれて両手をどけた瞬間、目の前に冬弥の顔があってびっくりする


ニコニコと私を見つめる瞳から逃れられない


騙されたとすぐに気付いた


そのまま冬弥は私を抱き寄せた


ドキドキと心臓が壊れそう


「友梨のそういうところ好きだよ」


『ま、またそうやってからかって』


「ほんとに。可愛いなぁって思う」


こんな距離でそんなことを言われると、どんどん眠れなくなりそうだ


というか冬弥が隣りにいるだけで眠れるかすらわからない


「明日も仕事だろ?寝な」


『う、うん。おやすみ』


「おやすみ」 


目を閉じて眠ろうと試みた瞬間、柔らかいものが唇に当たって目を開けた


そう


私は冬弥とキスをしていた



ビックリしたし、突き放すこともできた


でも、心地よくて気持ちが良くて…


「抵抗しないの?」


唇が離れてクスッと笑った冬弥


ガバッと布団を被って冬弥の胸に顔をうずめた


『お、おやすみ!』


絶対に眠れない

そう確信して寝たふりをした

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