第56話

「あー!むかつく!」


もちろん、撮影現場をあとにすると真希の怒りが爆発した


「絶対わざとじゃん!2リットルのペットボトルだよ!?つまずいて落とすならともかく!逆さにしてかけることなんてありえないっつーの!!」


『まぁ、確かにね』


「なのに何あの周りの反応は!まるで悪いのはマリーさんじゃんない!むしろ良い人なのに!」


そんな真希の言葉を聞いて私は笑った


「何がおかしいの!」


『だって朝はあんなにマリーさんのことワガママだ何だって言ってたのに』


「それは!ネットにそう書いてあったから!」


ネットの噂の真偽なんて私達にはわからない


でも、自分の目で見た限りはそう思えなかった


芸能人て大変だな


冬弥のことだって、私は端から疑ってかかってた


美人な人達と遊びたい放題だろうななんて思ってたし、今思うと悪いこと言ってしまったと反省する


「友梨、早く帰ってお風呂入るんだよ?」


『うん、ありがとう』


すぐ乾くなんて言ったけど、頭からかけられた2リットルの水は、冷たい夜風によって冷えきっていた


まるでお風呂上りのような頭を触って、駅に向かう足を止めた


『私あんまり家遠くないし、タクシーで帰るね』


「あー、そのほうがいいかも。服も大分濡れてるし。それで電車乗るの嫌だよね…じゃあまた明日ね!」


元気に真希が手を振って離れていく


大通りを眺めてタクシーが来るのを待った

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