第55話

周りのスタッフさん達がザワザワと集まり始めると、先程まで不敵な笑みを浮かべていた早川凛が、シクシクと俯き始めた


「本当にごめんなさい。わざとじゃないんですぅ…マリーさん怒鳴らないで…」


その豹変っぷりに、私と真希は開いた口が塞がらなかった


「ま、まぁまぁ、わざとじゃないようなので、マリーさんも落ち着いてくださいよ」


「凛ちゃん、メイク直して撮影始めようか」


明らかにスタッフの対応が早川凛を庇っていた


今水をかけたのは、わざととしか思えない


それなのに、まるで悪いのはマリーさん


腫れ物にでも触るかのような対応に、モヤモヤする


「ごめんなさいね。何か代わりの服を用意するわ」


でもマリーさんは、そんなスタッフの対応にも慣れていると言った感じだった


まるで、いつものことと言わんばかりに


『いえ、すぐ乾きます。でも今日はこの辺で失礼させていただいても大丈夫ですか?』


「もちろんよ。早く温まらないと風邪でもひいたら大変だもの」


『では今日は失礼しますね。ありがとうございました』

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