第44話

鍵を閉めてスマホを見ると、着信は冬弥からだった


『も、もしもし』


初めての電話に緊張している自分

まるで中学生みたい


「友梨?どしたの?何か息荒い」


『え!い、いやぁ…ちょっと運動してて…』


まさか元カレが家の前で待ち伏せしててなんて言えない


「運動?ダイエットなんて必要ないでしょ」


『ちょっと食べ過ぎちゃったから』


「何そのモデル並の美意識の高さ。すげぇな」


『ど、どうしたの?』


「ん?ちょっと声聞きたかっただけ」


恥ずかしくなるようなセリフ

でも嬉しかった


冬弥は…私のどこが好きなんだろう


『あ、のさ…』


「ん?」


聞きたかった

でも、聞けなかった


『…寒くなってきたから、また風邪ひかないようにね』


「うん、ありがとう。友梨もな」


『うん』


そんな質問、男にとっては苦痛でしかないと何かのコラムで読んだ気がする


「冬弥撮るよ」


電話の向こうで冬弥を呼ぶ声がした


「ごめん友梨、またな」


『うん、頑張って』


電話を切った瞬間、少しだけ淋しさが募った気がした

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